介護事業者、収入減は大きな痛手 「地域包括ケアシステム」4月本格始動

4月から本格始動する介護の「地域包括ケアシステム」構築をめぐり、介護事業者が対応に苦慮している。各自治体が地域に合った介護の受け皿づくりを独自に構築する地域支援事業がケアシステムの目玉だったが、政府が要介護者向けの介護報酬の大幅な引き下げを決めたことで、事業者の経営を圧迫しかねないためだ。政府は2017年4月までの事業開始を決めており、事業者の中には、サービスの規模縮小やコストカットを模索する動きも出ている。「なんとか持ちこたえたい」。4月から同事業へ移行する品川区でデイサービスを実施している小規模事業所の経営者は声を絞り出す。

 経営者の悩みの種は、品川区が設定したデイサービスの価格設定。品川区はデイサービスを要介護者向けのほか、地域支援事業として要支援者向けのデイサービスを設定するが、要支援者向けの価格を大幅に減額すると区内の事業者に知らせてきた。収入のほとんどをデイサービスに頼る同事業所にとって、50人の利用者のうち25人分の要支援者向けサービスの収入減は大きな痛手。4月から約9%減額となる要介護者向けの介護報酬と合わせ、事業所の全収入の25%が吹き飛ぶ計算だ。

 こうした悩みは各事業所に共通する。06年の法改正でデイサービスの介護報酬が高めに設定されたことで、デイサービスを事業の柱に据える事業者は右肩上がりに増えてきたためだ。厚生労働省によると、事業者数は14年3月には06年比で2倍となり、保険料と国・地方の社会保障費を合わせた費用額は約4倍の約1.5兆円に膨らんだ。

 槍玉に挙げられた事業者側からは「通所を狙い打ちにした」(介護業経営者)との恨み節ももれるが、要支援者向けサービスは本来、介護予備軍とされる利用者の生活改善や運動機能の向上のために実施されるのが大原則。だが、デイサービスが収益源を求める事業者と居場所を求める利用者の双方にとって居心地のいいサービスとなった面も少なくない。

 政府が、ケアシステム構築で目指すのは、こうした軽度向けサービスに偏った介護サービスの適正配分だ。要支援者向けの地域支援事業は、報酬が引き下げられた要介護者向けサービスよりも安価にする必要があるため、デイサービスに依存する収益構造になりにくいほか、地域独自の居場所づくりができれば自治体の介護費用削減にもつながる。日本総研の齊木大シニアマネージャーは「本来の介護保険の理念に基づいた見直しが広がることを期待したい」と話す。

 17年4月までの実施に向け、大手を中心としたサービス競争の火蓋は切られている。中堅介護事業者のワタミの介護は、横浜市と介護予防事業に関する連携協定を締結。新たな地域支援事業として、今年5月から地域の高齢者に介護予防知識を伝える栄養セミナーなどの開催を検討する。他にも介護事業者大手を中心に、サービス付き高齢者向け住宅への投資も広がっており、自立支援からみとりまで自社で完結し、全体で利益を出す仕組みづくりを目指す。


引用:Yahooニュース